漫画家バロン吉元さん 師匠・横山まさみち氏との一枚

公開日: 更新日:

 1960年代から70年代にかけて巻き起こった劇画ブームの立役者のひとりであり、代表作「柔侠伝」シリーズは全共闘世代に圧倒的な人気を博した。80年以降は「龍まんじ」名義で絵画制作をするなど幅広く活躍中だ。今年デビュー60年を迎えたバロン吉元さんの修業時代とは……。

  ◇  ◇  ◇

「これは私の師匠の横山先生のお宅で、奥さまが撮ってくれた写真です。60年代の中頃かな。横山プロが設立されたばかりで、アシスタントは私1人。桜台のアパートから江古田の仕事場まで、毎日自転車で15分かけて通いました。貸本漫画から雑誌に軸足を移そうという頃で、先生は連載を何本も抱えて大忙し。徹夜続きの毎日で、アパートに帰れない日もよくありました。でも給料は2000~3000円。今のお金に換算すれば2万~3万円くらいでしょうか。それでは生活できないから、夜はキャバレーのボーイなどのアルバイトで食いつないでいました」

“横山先生”とは、本紙で約20年間連載した人気漫画「やる気まんまん」の作者、横山まさみち氏のこと。

「梶山季之氏や花登筐氏のややエロチックな原作ものがヒットしたので艶笑系の作品の依頼が増えたのだと思います。ご本人は遊びごとはいっさいやらず、釣りだけが趣味の生真面目な方でした」

 バロンさんは中国・旧満州生まれで、鹿児島県指宿市育ち。小学生の頃から絵を描くのが得意で、仲間と冒険ごっこをするのが大好きなわんぱく少年。一方で、柴田錬三郎や城戸禮といった人気作家の小説を読みふけり、その挿絵を描くのが日課だった。

■美大に入り挿絵画家を目指すも…

 高校卒業後、武蔵野美術大学西洋画科に入学したが、挿絵画家を目指して中退。出版社に持ち込みを重ねたが、ことごとく断られた。

「当時、挿絵は一流の画家が副業的にやるか、キャリアのある挿絵専門の絵師のものだったんです。劇画に比べたら原稿料が格段に高く、1本連載を持てば家が1軒建つといわれましたから、若造が入り込める世界ではなかったんですね」

 挿絵画家を諦め、横山氏のアシスタントに応募したのが21~22歳の頃。

「絵には自信があったけど、ストーリーを紡ぐ基礎がなかった。横山先生はストーリー漫画の名手ですから、基本を徹底的に叩き込まれました。温厚な方で、声を荒らげるようなことはないけど指導は厳しかった。初めて一本立ちし、自分名義の単行本を出させていただいた時も、下書きを見せたら、『これじゃダメだ』と散々書き直しを命じられて……。でも、出来上がった本を見たら、私がやろうとしたことは独り善がりに過ぎず、先生の指摘したことが正しいとわかるわけです。それ以来、先生の言うことは素直に聞くようになりました」


最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動