「沈黙」水と油の関係 厳格な姉と性行為を見せつける妹
1963年 イングマール・ベルイマン監督
ベルイマン監督が45歳で撮った暗くて難解な名作。来週DVDが発売される。
蒸し暑いヨーロッパを2人の女が列車の旅をしていた。姉のエステル(イングリッド・チューリン)は翻訳家、妹のアンナ(グンネル・リンドブロム)は幼い息子ヨハンを連れている。エステルが病気で吐血したため、3人はある町のホテルに宿泊。エステルは部屋に閉じこもり、アンナは外出して劇場で男女のセックスを目撃する。そんな妹を姉は何をしていたのかと詰問。妹は行きずりの男を拾い、教会で交合したと明かす。
夕刻にアンナは再び外出。ホテルの廊下で例の男と接吻し、別室で再び体を交える。エステルはその部屋をノックしてまたも妹と口論。翌朝、アンナは発作で苦しむ姉を残してヨハンとともに出発する。別れの際、エステルはヨハンにメモを渡す。車中でヨハンが開くと、そこには「精神」と書かれていた……。
■「精神」の相克
言葉が通じない町にぽつんと置かれた異邦人の姉妹。2人は水と油のように融合できない関係だ。厳格な姉は子供を置いて男を漁る妹の奔放さを看過できず説教する。妹はあらがうように自堕落な性行為を見せつけ、姉妹の溝は広がっていく。血縁者ながら、姉は妹に近親相姦らしきそぶりさえ見せる。筆者は男の兄弟しかいないからよく分からないが、世の中にはこうした複雑な相克を抱えた姉妹がいるらしい。