「仁義なき戦い」で眉を剃り落としたら迫力は出たけれど…
ただ、実際のヤクザを目の前にし、ときには一緒に飯を食ったり、酒を飲んだりした経験は大きかったよ。彼らの「におい」を肌で感じることができるわけだから、こっちも吸収できるものは何でも吸収してやろうという気持ちだった。
もともと東映は「不良性感度」の高さを売りにした映画会社だから(笑い)。役者もスタッフも、そういう現場の雰囲気に対する抵抗感はなかった。
あんな映画の現場はもう二度とないだろうな。時代も違うし、映画会社の体質も違う。世間やマスコミの役者を見る目も違う。役者自身の考え方だってすっかり変わった。だから、「仁義なき戦い」シリーズと、平成の時代につくられたヤクザ映画を見比べたら、リアリティーがまるで違うよ。
そういえば、俺も第3作「代理戦争」ではモデルとなった人物に少しでも近づこうと考え、眉をわざわざロウで埋めて、その上から肌色のドーランを塗るというメークを施してみたんだよ。
ところが、汗をかくと溶けちゃう。そのたびにメークを修正するんだけど、だんだん面倒になってきた。で、撮影中のある日、自分で剃り落としちゃった(笑い)。