渡哲也さんから2mの距離で「西部警察」のテーマを口ずさむ
その大プレッシャーの中での演技なんて……俺もう初めの2、3日は記憶を失っていたと思うのです。
しかし、人間とは恐ろしいもので、慣れとはおぞましいもので……す。
ロケも数日が過ぎたその日、俺、自分でも驚いたのだけど、向こうで休憩中の哲さんをボ~ッとながめながら、無意識に「西部警察」のテーマ曲♪チャンチャンチャ~ン、チャチャチャチャチャチャチャ~と口ずさんでいるではありませんかー!!
そう、知らず知らずにやっぱりあのサングラスにショットガンの大門圭介団長の哲さんが心の片隅から緊張のすき間をぬってひょっこりと顔を出したのでしょう……ね。
そうなると、本来がくだらないことに目がない俺だから、「う~ん、もっと哲さんに近い距離で西部警察を口ずさんでみた~い!!」となったのだった。
しかし、本当に哲さんの耳にそれが聞こえて不愉快になられて撮影がストップにでもなれば大問題……あー! でも男ならそのギリギリの勝負に挑みたい!! とロケ当初の緊張とはまったく別物のプレッシャーの中、毎日心の中を汗びっしょりにしながら10メートル、7メートル、5メートル、4メートル、3メートル、そして最終的にはか細い声であったろうが、「2メートル西部警察」を達成したのでしたー!!(さすがにあれ以上はムリでした)
でも、もしかしたら渡さんはそんなことは全部お見通しで俺をリラックスさせてくれていたのでは……風格の中にそんなやさしさも自然と醸し出している渡さんだったのです。 (つづく)