新宿梁山泊「唐版・犬狼都市」鮮烈なラストシーンに震撼
犬の王国、水中花、地下迷宮、オルゴール箱……意匠を凝らした絢爛たる唐十郎の劇世界が全面展開。しかし、その帰着点はシュールな妄想の闇にまぎれていく。理にかなう物語ではなく、一編の壮大な詩だと思って楽しむべき舞台だ。
冒頭の奥山の神々しいまでの身体パフォーマンスが圧巻。一転してテントの裾が跳ね上がり、借景のかなたから走り込んでくる役者たち。この数分間の幻想美で観客を異世界に引きずり込む金守珍の演出の手腕が冴えた。3幕2時間30分だが、スペクタクル性とクライマックスのカタルシス(浄化)はテント芝居の醍醐味。
今回初出演の宮原、オレノグラフィティが色香ある演技で大健闘。凄艶なヒロインの水嶋、駅員を好演した松田ほか、役者たちが唐戯曲のパズルのピースとしてそれぞれピタリとはまった。鮮烈なラストシーンは演劇界の語り草になるに違いない。22日まで。
★★★★