鬼才キム・ギドク監督は韓国で嫌われラトビアで亡くなった
今月11日、韓国映画界の“鬼才”“異端児”といわれたキム・ギドク監督が新型コロナウイルスに感染し亡くなった。享年59。ラトビア共和国で亡くなったという。現地では「監督が永住を希望していた」と報道された。
日本にもファンが多く、「韓国を代表する映画監督のひとり」「映画界に大きな損失」と報じられたが、韓国では残念がる声が少なく、追悼ムードにはなっていない。反応は冷めたもので、監督がなぜ韓国を離れたのかを明確に物語っている。
キム・ギドク監督といえば、その作風は独特で唯一無二の存在だった。米国アカデミー賞で4冠に輝いた「パラサイト」のポン・ジュノ監督とは対照的。低予算映画が多く、韓国内での大ヒット作はない。それでも「春夏秋冬そして春」(2003年)、「サマリア」(2004年)など国際映画祭で次々と賞を獲得。「嘆きのピエタ」(2012年)はベネチア国際映画祭で最高賞を受賞し、世界3大映画祭すべてで受賞経験を持つ初めての韓国人監督となった。
私が今も記憶しているのは「メビウス」(2013年)。浮気した夫への復讐で、妻が息子のペニスを切断するという突拍子もない物語だった。切り取られたペニスの一部が道路上を転がるシーンは面白くもあったが、試写会では過激な映像に耐えきれず、具合を悪くした女性もいたほど。