「ザ・空気ver.3」底知れない時代の闇を見据えた会心作
安倍政権によって牙を抜かれた日本のマスメディアの惨状を描いた永井愛(作・演出)の「ザ・空気」シリーズの第3弾。
舞台はテレビ局の9階会議室。
BSニュース番組「報道9」でリベラル派と「新政権の40日」を巡る対談に出演するため局に来た政治評論家の横松(佐藤B作)は検温で37・4度だったため、コロナ対策の基準に微妙に引っかかり待機させられる。
イラつく横松をなだめるチーフディレクターの新島(和田正人)、ADの袋川(金子大地)、サブキャスターの立花(韓英恵)ら。
そこにチーフプロデューサー・星野(神野三鈴)が現れる。彼女は政府に批判的な番組作りをしたため局上層部の不興を買い、今夜の放送で番組を降りることになっている。この会議室は彼女がかつて私淑した桜木が自殺した部屋だった。
気鋭の報道マンだった桜木は世間の「空気」をバックにした保守系団体に追い詰められ自殺したのだ。
横松と桜木にも浅からぬ因縁があった。2人は新聞記者時代の先輩後輩の仲。桜木はテレビ局に転じてからも反権力を貫いたが、横松はかつてはマスコミの腐敗堕落を糾弾する先鋭的な新聞記者だったにもかかわらず、いつしか政権に取り込まれ、政治部記者から出世し今や時の政権の御用評論家となっている。