「ザ・空気ver.3」底知れない時代の闇を見据えた会心作
はからずも会議室で3人の人生が交錯する。
横松の熱は下がらず、何者かにとりつかれたかのように錯乱、昔に戻ったように辛辣な権力批判を口走り始める。そして彼自身も関わったという「学術会議任命問題」についての重大な秘密を放送中に暴露すると言い出す。大スクープに星野らは色めき立つが、そこに思わぬ「落とし穴」が……。
前2作と同じく忖度(そんたく)や自己規制、自粛といった同調圧力がまかり通るマスメディアを題材に日本を覆う「空気」の正体を描いているが、今回は権力を追及する側の「落とし穴」を描くことでただの告発劇ではなく、自己批判を内包する批評性の深い作品になっていた。
2つの人格を行き来する佐藤B作、反骨のジャーナリストを体現する神野三鈴の軽妙・真摯な演技が光る。時宜を得たギャグで笑いを取りながら底知れない時代の闇を見据えた永井愛の会心作だ。1時間45分。東京芸術劇場シアターイーストで31日まで。福岡、山形など地方公演も。
★★★★