綿引勝彦さんの思い出「鬼平」の名を出すと目つき変わった
俳優の綿引勝彦さん(享年75)が昨年末、膵臓がんのために亡くなっていたことがわかった。
複雑な心情を表現する難しい役柄をはじめ、刑事から悪役まであらゆる役柄を演じた名バイプレーヤーだった。
主演俳優という立場ではないことが多く、映画の製作発表などで直接取材する機会はほとんどなかったのだが、実は印象に残っている取材が一度だけあった。
今から20年ほど前のことであろうか、ちょうどフジテレビ系「鬼平犯科帳」で密偵の大滝の五郎蔵の役を長く続けていた頃のことだ。
僕は毎年、正月にハワイへ到着する芸能人の取材でホノルル空港で張り込みをしていたのだが、そこへ綿引さんが現れた。囲み取材の交渉をしたところ、綿引さんは「私はそんなインタビューを受けるような役者じゃありません。他の方々に話をしてください」と控えめに、あくまで丁重に断ってきた。
しかし、僕はこう食い下がった。
「いや、大滝の五郎蔵がハワイにいる、そういう絵柄だけでも面白いと思いませんか。ぜひ一言!」