著者のコラム一覧
城下尊之芸能ジャーナリスト

1956年1月23日、福岡県北九州市生まれ。立教大学法学部卒。元サンケイスポーツ記者。82年、「モーニングジャンボ 奥様8時半です」(TBS)の芸能デスクとなり、芸能リポーターに転身。現在は「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ)、「朝生ワイド す・またん」(読売テレビ)、「バイキング」(フジテレビ)に出演中。

綿引勝彦さんの思い出「鬼平」の名を出すと目つき変わった

公開日: 更新日:

 すると綿引さんの表情がスッと変わった。

「えっ……、そうかい?じゃあ、ひとつやってみるか」

 まさに老獪な密偵の表情になっていた。

 快く取材に応じてもらえたのだが、役者が役名を耳にしてカチッとスイッチが入る瞬間を見せてもらったと思った。

「鬼平犯科帳」でいえば、同じような経験をさせてもらったことがあった。故・高橋悦史さんが番組スタートから第6シーズンまで与力役でレギュラー出演した後、1996年にやはり膵臓がんで倒れ、亡くなってしまった時のことだ。

 主演の鬼平の中村吉右衛門はちょうど歌舞伎の夜の部の舞台があった。通夜は確か埼玉県だったか、かなり距離的に離れていた。僕らは「さすがに吉右衛門さんは来られないんじゃないか」と話しながらも、念のため待っていた。すると、吉右衛門が車で駆けつけた。口を真一文字に食いしばった表情で我々の前を通り抜け、棺の前に立つと、両手の指を握りしめるように組んで目を閉じて祈っていた。すぐに取って返すように引き揚げるのだが、ほんの一言二言コメントしてくれた。

 その声や間合いは間違いなく鬼平が降ってきたもので、無念の表情だった。役者とは役に生きるものであり、そして役を通じて役者同士も濃密な関係を築くことがわかった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    大阪万博の目玉 344億円の巨大木造リングはほぼフィンランド産…「日本の森林再生のため」の嘘っぱち

  3. 3

    「65歳からは、お金の心配をやめなさい」荻原博子著

  4. 4

    佐々木朗希「通訳なし」で気になる英語力…《山本由伸より話せる説》浮上のまさか

  5. 5

    タモリが「歌う日露戦争」と評した圧巻の紅白歌合戦パフォーマンス

  1. 6

    高額療養費問題が参院選を直撃か…自民が噴出「立憲の凍結案のまざるを得ない」に透ける保身

  2. 7

    大阪万博パビリオン建設は“24時間体制”に…元請けの「3月中には完成させろ!」で危惧される突貫工事の過酷労働

  3. 8

    西武・西口監督が明かす「歴史的貧打線」の原因、チーム再建、意気込み、期待

  4. 9

    松本若菜に「小芝風花の二の舞い」の声も…フジテレビ“2作連続主演”で休めない“稼ぎ頭”のジレンマ

  5. 10

    大阪万博「歯抜け開幕」ますます現実味…海外パビリオン完成たった6カ国、当日券導入“助け舟”の皮肉