中村倫也ファンが何度でも珈琲を飲みたくなる人情ドラマ
珈琲いかがでしょう(テレビ東京系/4月5日スタート・毎週月曜 午後11時6分~)
「あの珈琲屋さんが中村倫也にしか見えない!」――と漫画ファンを夢中にさせたコナリミサト原作の人気漫画「珈琲いかがでしょう」(マッグガーデン刊/2014年~15年『WEBコミック EDEN』連載)が、本当に中村倫也(34)主演でドラマ化され、原作ファンも倫也ファンも大喜びだ。
オムニバス形式で、毎回2編のショートストーリーが放送されている。
いい香りに誘われて向かったその先にあったのは、軽トラックを改造したキッチンカー。全国の街から街へ、時には山奥へと移動する珈琲屋「たこ珈琲」だ。店主の青山一(中村倫也)が一杯一杯、丁寧に心を込めて淹れた珈琲が、人生に少し傷ついた人たちの心を癒していく。
そんな店にやって来るのは、手書きの礼状に時間をかけすぎて上司からいつも小言を言われているOL(夏帆・29)、クレーム対応で朝から晩まで謝ってばかりの電話オペレーター(貫地谷しほり・35)、東京での華やかな生活に憧れる山奥の女子高生(山田杏奈・20)、画家になる夢を諦めて児童売春斡旋まがいの行為に手を染めた専門学校生(臼田あさ美・36)、女性社員にコキ下ろされる勘違いサラリーマン(戸次重幸・47)、田舎町の場末の女装スナックママ(滝藤賢一・44)ら。そんな彼らが、青山が淹れた1杯の珈琲とさりげない会話で元気づけられ、埋もれていた自分の長所に気づいて自信を取り戻したり、一度は破れた夢の実現に向かって歩み始めたりする。ほろ苦く、切ないショート・ショートだ。
中村はドラマのために珈琲ドリッパーで猛練習
一方、「たこ珈琲」が全国を移動しているのは、ある男から逃げ回っているからで、その男とは半グレのような風貌の男、杉三平(磯村勇斗・28)。杉は青山を「人殺し」と呼んでいる。
果たして青山は本当に人殺しなのか? 人を殺したとすれば、一体どんな事情があって誰を殺したのか?
ドラマでは、青山の過去が徐々に明らかになっていくが、髪を金色に染めた若いころの青山の姿に度肝を抜かれる視聴者も少なくないだろう。
中村にとって、コナリミサト原作のドラマ出演は、2019年に放送されたTBS系ドラマ「凪のお暇」で、「安良城ゴン」役を演じたのに続く。コナリさんも「最終回までの脚本をすでに読ませていただいているのですが、原作のエピソードはもちろんのこと、ドラマオリジナルのストーリーもあって楽しみです。中村さんが演じてくださった『ゴン』が素晴らしすぎたので、青山も素晴らしすぎる未来しか見えません」と話している。
ちなみに、中村は撮影が始まる前の正月休みに毎日、珈琲ドリッパーと向き合って練習を重ねたというから、珈琲を入れる所作も堂に入っている。ドリップ珈琲の愛好者が増えるかもしれない。
テレビ東京コンテンツ事業局コンテンツビジネス部の合田知弘プロデューサーも、ドラマの展開を珈琲になぞらえて「ひと口目はちょっと甘〜く感じるかもしれませんが、回を追うごとに意外なほどビターでハードなテイストに仕上がっていきます。そんな口当たりの変化も、ぜひ楽しみにご覧ください」と自信満々だ。
「凪のお暇」のほかに「美食探偵 明智五郎」(日本テレビ系)や「この恋あたためますか」(TBS系)などで女性ファンの心をワシづかみにしてきた中村が、新境地を開いたとも言えるドラマ。監督・脚本を手掛けたのは、映画「かもめ食堂」を監督した荻上直子氏(49)で、原作を知らない視聴者も、原作を読んだ視聴者も楽しめるに違いない。
▽高橋恵市(フリーライター)山口県出身。大学卒業後、出版社勤務を経てライターに。グルメ紹介や企業広報、テレビ番組批評など幅広く手がける。ペンネームで小説も出版している。