著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

「キックの鬼」こと沢村忠を生んだ“名プロモーター”野口修

公開日: 更新日:

 64年2月12日、かねて握っていたタイのボクシング界とのチャンネルを生かし、タイ式ボクシング(ムエタイ)と大山道場(現・極真会館)の対抗戦を、本場バンコクで催したのである。K―1創始者の石井和義をして「日本のプロ格闘技のはしり」と言わしめた本戦こそ、キックボクシング誕生のきっかけであり、野口修が「格闘技プロモーターのパイオニア」であるゆえんである。

 その後、極真空手創始者・大山倍達と金銭トラブルで決別すると、友人に紹介された日芸(日大芸術学部)空手道部の青年を急ぎエースに仕立て上げ、デビューさせた。本名を白羽秀樹という青年こそ「沢村忠」だった。

 沢村は本人の言い知れぬ努力はもちろん、類いまれな野口修の興行センス、全盛期を迎えていたTBSテレビの影響力もあって、瞬く間にスターの座に駆け上がった。ボクシング界からフェードアウトしてまで起業した野口修のキックボクシング事業は、望外の大成功を収めたのだ。

 凡百のプロモーターなら、自らがつくったキックボクシングをさらに発展させ、ボクシングと並ぶ競技にしようと考えるかもしれない。もしくは、競技人口を増やすべくアマチュア組織を立ち上げ、世界的に広めるために五輪競技にすべく働きかける……といったことを考えるのではないか。それが成功を維持する近道だからだ。

 しかし、根っからの興行師気質の野口修は、そのいずれにも、さしたる関心を抱かなかった。ここから彼は、キックボクシングで得た蓄財を元手に芸能界に進出するのである。(つづく)

【連載】芸能界と格闘技界 その深淵

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情