「新東宝スターレット」6期生のオーディションに中学3年生の沢村忠の姿が
「戦後最大の労働争議」といわれるのが、大手映画会社・東宝で発生した「東宝争議」である。1946年から48年にかけて3度にわたり繰り広げられ、特に48年の「3次争議」では共産党系組合員との攻防に警察のみならず、警察予備隊(現・自衛隊)、ついにはGHQの戦車や戦闘機までが出動し、「来なかったのは戦艦だけ」といわれるほどの騒ぎとなった。
東宝創始者にして大株主の小林一三は、社長に据えていた異母弟の田辺加多丸を会長に棚上げ、反共主義者で知られる衆議院議員の渡辺銕蔵を社長に迎え、この労働争議を徹底的に弾圧した。その際、無頼の徒を率いて組合潰しの実行隊長となったのが、拙著「沢村忠に真空を飛ばせた男」の主人公・野口修にとって“叔父貴”と言うべき存在の大澤武三郎だった。