著者のコラム一覧
桧山珠美コラムニスト

大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」に「今月のダラクシー賞」を長期連載中。

「我が心の大滝詠一」と「博士ちゃんSP」の圧倒的熱量で感じた歌番組の過渡期

公開日: 更新日:

 8月28日の「我が心の大滝詠一」(NHK・BSプレミアム)を見た。今年春にBS4K・BSプレミアムで放送されたものだが、視聴者からアンコールの声が寄せられ再放送に至ったという。

 番組では盟友・松本隆らの証言をもとに伝説のアーティスト、大滝詠一の軌跡をたどる他、これまでに大滝作品の録音に参加してきたミュージシャンの演奏をバックに小泉今日子(快盗ルビイ)や小林旭(熱き心に)、薬師丸ひろ子(探偵物語)らのオリジナルアーティストが歌った。

 1曲目「君は天然色」とラスト「幸せな結末」は大滝本人のボーカル音声を使用、大滝のいるべきところにスポットが当たる演出もよかった。全面的に大滝へのリスペクトであふれた音楽愛を感じる番組だった。

 8月21日の「博士ちゃん特別編! 夏休み2時間スペシャル! 博士ちゃんが衝撃を受けた昭和歌謡の歌姫ベスト20!」(テレビ朝日系)も面白かった。番組おなじみの昭和大好き博士ちゃんたちが昭和の歌姫について語るものだが、その偏愛ぶりに驚くばかり。1位美空ひばり、2位太田裕美、3位山口百恵……坂本冬美、八神純子、高橋真梨子と昭和世代には懐かしい名前が次々。

 なかでも青江三奈については「伊勢佐木町ブルース」の「アァ~ン」というため息は最初はなかったが、レコーディングで青江が咳をしたのを聞いたディレクターが急きょ、それを入れるようにと頼んだこと、さらにその声が色っぽ過ぎるということで紅白に出場した際、その部分をカズーの音で差し替えたことなど、昭和世代も知らないような知識を博士ちゃんが。

 ゲストの葉加瀬太郎は「今の子たちはYouTubeで見るから今の歌手と昔の歌手に区別がない」と言っていたが、昭和歌謡の魅力にハマる子供たちが多いということは博士ちゃんたちにとって今の楽曲よりも、昭和歌謡により魅力を感じるということだろう。

名曲を語り合う熱量の高い番組がいい

 実際、美空ひばりや笠置シヅ子はリスペクトしても、もう一人のゲスト・きゃりーぱみゅぱみゅには何の思い入れもない感じも笑ってしまった。

 この2つの番組から歌に対する圧倒的な熱量を感じて思ったのはそろそろ歌番組も変換期に来ているということ。一時期、昭和世代をとりこもうと懐かしの名曲的番組が増えたが、それも昔の映像でつなぐだけでは飽きてきた。とかく映像さえあればなんとかなると思いがちだが、同じ映像ばかりを見せられても……。

 それならば、歌っている映像がなくても「我が心の大滝詠一」や「博士ちゃん」のように、じっくりと名曲を語り合う熱量の高い番組がいい。

 ちなみに、先日の「ミュージックステーション3時間SP」の視聴率は第1部5.3%、第2部9.3%。音楽番組も過渡期に来ている。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2

    中居正広の騒動拡大で木村拓哉ファンから聞こえるホンネ…「キムタクと他の4人、大きな差が付いたねぇ」などの声相次ぐ

  3. 3

    木村拓哉は《SMAPで一番まとも》中居正広の大炎上と年末年始特番での好印象で評価逆転

  4. 4

    中居謝罪も“アテンド疑惑”フジテレビに苦情殺到…「会見すべき」視聴者の声に同社の回答は?

  5. 5

    中居正広9000万円女性トラブル“上納疑惑”否定できず…視聴者を置き去りにするフジテレビの大罪

  1. 6

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  2. 7

    フジテレビは中居正広で“緊急事態”に…清野菜名“月9”初主演作はNHKのノンフィクション番組が「渡りに船」になりそう

  3. 8

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  4. 9

    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース