<51>ドン・ファンは新大阪に向かう新幹線からミス・ワールドに4、5分ごとに電話
改札口で彼女と別れて、ドン・ファンと一緒に新幹線のグリーン車に乗った。車両には他に客が1組いるだけで、貸し切り状態だった。
■まるで恋をし始めた少年
「いま乗ったから。無事に帰れたかい? そうですか。はいはい。ありがとうねえ」
席に腰掛けるなり、ドン・ファンは携帯を出して電話をかけ始めた。他の客とは席が離れているので迷惑をかけるほどではない。どうやら相手はミス・ワールドのようだ。さっき別れたばかりなのに、まるで恋をし始めた少年のようではないか。
「ぞっこんなんですね」
「そうや。いい女やろ」
「そうかもしれませんが、あなたは妻帯者ですよ」
「いやいや、そんなのどうでもええから」
貞操観念など皆無のドン・ファンに説教をするのは馬の耳に念仏というものだろう。私はトラブルに巻き込まれたくないので、それ以上突っ込むことはしないようにしていた。