<8>談志師匠の墓前に報告した時「いいんじゃないか」と言ってくれたような気がしたんです
2014年、談幸は60歳になった。還暦を迎えると、たいてい己の行く末を考えるものだ。
「私も考えました。師匠は75で亡くなった。年齢的に、ちゃんと高座を務められるのは、あと10年から15年じゃないかと。談志一門が寄席に出なくなって30年もたってる。落語家として育ててもらった寄席に出ないまま生涯を終えたくない。師匠は寄席の悪口を言ってましたが、それは愛情の裏返しで、本当は大好きなんです。残りの人生、その寄席の空間に身を置きたいと切に思いました」
寄席に出るためには、落語協会か落語芸術協会に入らねばならない。
「落語協会にはいまだに談志一門を敵対視する方々がいますから、選択肢がありません。そこで芸協の事務局長の田澤さんに相談しました」
田澤祐一氏は、芸人のみならず、各寄席の席亭たちの信頼が厚い人だ。
「田澤さんは以前から、立川流と5代目円楽一門会の落語家を定席に出したいと考えていた方なので、私の入会にお力添えしてくれたんです」