<8>談志師匠の墓前に報告した時「いいんじゃないか」と言ってくれたような気がしたんです
まず、立川流の代表である土橋亭里う馬に脱会を申し出た。そして後日、理事会で了承される。
「形は円満退会でしたが、腹の中では『裏切り者』と怒っていた人もいたでしょうね。ただ、師匠の墓前に、『芸協に移ります』と報告した時、『いいんじゃないか』と言ってくれたような気がしたんです」
私もそう思う。寄席を愛した談志が、談幸が寄席に出られることを喜ばないわけはない。
「芸協の理事会で認められ、2015年1月1日付で正式入会しましたが、問題は弟子の吉幸と幸之進の処遇です。どちらも二つ目で、特に吉幸はこの年、立川流での真打ち昇進が決まってました。でも、芸協では新参者ですから」
序列を重んじる業界なので、これは難問だ。
「田澤さんが根回ししてくれた結果、吉幸は1年、幸之進は2年、前座をやり直すことになりました。それで誰からも文句が出ないと。2人に因果を含めましたよ。『これから2度目の青春が始まると思って辛抱してくれ。君たちは転校生みたいなものなんだから、新しい友達と親しくなるための必要な期間だ』と」