「十月大歌舞伎」コロナ禍の制約を逆手に取った企画はいいが…
東京都などの緊急事態宣言も解除されたが、劇場の客足はなかなか戻らないようだ。今月は第1部に集客力のある市川猿之助が出ているのに、3階はほぼ埋まっていたが、1階、2階は空席が多い。
その第1部のメインは「天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばはし)」。本来なら4時間近くの長い芝居だが、小幡小平次が出てくる部分を取り出して「小平次外伝」としての上演。だから、タイトルにある天竺徳兵衛は出てこない。
コロナ禍の歌舞伎座は、2時間前後の枠に、1時間前後の芝居と、休憩をはさみ20分前後の舞踊劇というのが基本となっている。そのため、時間内におさまる演目から選ぶ、長いものはカットする、といった制約があるが、これを逆手に取り、普段カットされている部分だけを取り出すというアイデアは、いい。
この状況下で歌舞伎座へ行く人は、よほどのファンだから、かえって、こういう機会には、めったに上演されないもののほうが喜ぶのではないか。
猿之助の2役は、男と女。男は殺され、後半は幽霊になって出る。女は悪女。笑える場面が随所にあるのだが、客席は、あまり沸かない。まだお客さんは笑う気分ではないのかもしれない。