<74>生前のドン・ファンにゴマすり…早貴被告の後見人を名乗り出た元従業員M
葬儀屋さんとの打ち合わせの前に野崎幸助さんの会社「アプリコ」に行くと、元従業員のMが来ていた。
「オレはオヤジと長い付き合いだったけれど、遺言も残していないし、一体どうなるんだろう。まあ遺言なんて残すようなタマじゃないからねえ」
当然のことながらドン・ファンが遺言を書いたというようなことを知っている者は皆無だったし、私自身もそのようなことを耳にしたこともない。Mはドン・ファンとのつながりが深かったことを主張するが、ドン・ファンはMのことを信頼しておらず、お金を貸している関係だったので、「Mに利用されている」と何度もこぼしていた。
しかし、利息を取って貸しているのだから、ドン・ファンとしても利用していたことは間違いない。
「やはりオレがオヤジをフォローしないとなあ。早貴ちゃんの後見人としてやらないと」
Mは自分しかその立場が務まる人がいないと胸を張ったのである。
「Mは早貴を取り込んで会社を運営していくつもりなんだ。あんなヤツにそうさせてたまるか」