<76>早貴被告が「2億円をもらえれば東京に帰ります」「喪主?何ですか?」
死亡の翌日の5月25日午後4時ごろから、葬儀屋さんとの打ち合わせが始まった。メンバーは早貴被告、番頭格のマコやん、佐山さん、家政婦の大下さん、そして私だ。元従業員のMも顔を出したが、犬猿の仲の佐山さんの前ではおとなしく椅子に腰かけているだけだった。
通夜・葬儀費用などについては経理担当の佐山さんの判断が必要であるが、葬儀屋との交渉事、そして通夜、葬儀の日程は私が中心になって皆の意見を聞きながら決めていった。野崎幸助さんの資産は凍結されて勝手に銀行口座から引き出すことはできないが、アプリコ名義の通帳は使えるので、そこから費用は捻出できる計算ができていた。その額は約2億円であり、これが草刈り場になっていくとは、この時点では想像もしていなかった。
ドン・ファンは大阪の会計事務所に決算を任せていたので、佐山さんは電話で頻繁に連絡を取っていた。通夜と葬儀はどのようにするのか、お寺をどこにするのか、お墓はどうするのか、遺影は? などなど決めなければならないことが数多くあった。
「遺骨はどうするんや? 田辺に置くのか、それとも早貴ちゃんが東京に持っていくのかい? どっちでもいいんやで」