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吉田隆記者、ジャーナリスト

1984年に写真週刊誌「FRIDAY」の創刊準備メンバーとして専属記者契約を結ぶ。87年の大韓航空機爆破事件では、犯人の金賢姫たちが隠れていたブダペストのアジトを特定、世界的に話題となる。初代「張り込み班チーフ」として、みのもんたや落合博満の不倫現場、市川染五郎(現・松本幸四郎)や石原慎太郎の隠し子、小渕恵三首相のドコモ株疑惑などジャンルを問わずスクープ記者として活躍。

<76>早貴被告が「2億円をもらえれば東京に帰ります」「喪主?何ですか?」

公開日: 更新日:

 マコやんが聞いた。

「……私は遺骨はいりませんし、お墓もいりません」

 小さい声だったがハッキリと言い放った瞬間にリビングの空気が凍り付いた。まさかの展開だったので、誰も何も言えずに黙ったままだった。

「いりませんってどうゆうことや?」

 マコやんの語気が強くなった。

「今すぐに2億円もらえれば東京に帰るって言われたわ」

 佐山さんからとんでもない言葉が飛び出した。なんでも、打ち合わせの前にアプリコに行った彼女は、佐山さんにそう伝えたというのだ。

 その瞬間に私は頭に血が上っていくのを感じた。

「キミなあ、戸籍上は社長の妻なんだぜ。遺産は欲しいけれど遺骨はいらないし墓の面倒を見ることもないというのは、随分と虫がいいんじゃないか。それなら遺産はいらないからと言って東京なり札幌に帰ったらどうだ!」

 私が一喝すると部屋が凍り付き早貴被告は下を向いたまま黙っていた。こんな女を選んで結婚したドン・ファンが哀れで惨めで救われない。ドン・ファンが亡くなって24時間も経っていないのに、早貴被告は2億円をもらうことを考え続けていたのだろうか。私の背筋がザワザワとしたのを今でもはっきりと覚えている。

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