ブル中野さん 体重118キロの貴重な一枚…入門から10年の苦労が報われた思い出
ブル中野さん(元プロレスラー/53歳)
女子プロレスが大人気の1980~90年代に大活躍、悪役軍団“獄門党”でトップを張ってきたブル中野さん。昨年、アルコール性肝硬変で入院していたことが今月発覚し、ネットニュースに。秘蔵写真は現役時代のマックス体重だった頃のスナップ。この一枚の写真には入門から10年の苦労が報われた思いが詰まっている。
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この写真は93年ですかね。埼玉県秩父市のリングスターフィールドという全日本女子プロレスの合宿所での一枚。会社がログハウスとか建てて合宿できる施設があったんです。
なぜ秘蔵写真かというと、1つはこの頃が体重マックスの118キロだったんです。
83年に入門した時は170センチ、63キロくらい。体を大きくしたかったけど、15歳から数年はお金がなくて苦労しました。最初の1年は寮暮らしですが、会社から支給されるのは米だけなので、オカズにお金がかかる。
先輩たちが巡業から帰ってくると、移動用のバスを私たち若手が掃除しますが、ジャガー横田さんやデビル雅美さん、ミミ萩原さんらスター選手たちが、ファンからもらってバスで食べた差し入れの食べ残しをゴミ箱から拾い、食べていました。
デビュー後、アジャコングさんとの抗争が始まる頃から100キロを目指して。92キロまでは太るけどそれ以上は無理で、男性ホルモンを打ちました。最初はドンドン大きくなれてうれしい気持ちでしたが、そのうちヒゲやスネ毛が生え、生理が止まり、最後はガラガラ声になっちゃって。当時の女子プロは3000人の会場の奥まで声を響かせるので、男性ホルモンはやめました。
■やりたくないヒールで石を投げられてつらかった
他につらかったのは悪役になったこと。話は戻りますが、デビュー後少しして会社からベビーフェースとヒール(悪役)の振り分けがあった時です。「〇〇は人気が出そうだからベビーフェース」とか分けられる。私はすぐに「悪役になれ」と言われました。
それからお客さんは私を本当に悪い人だと思って、移動のバスから会場に入る短い間に石を投げられました。ほとんどの会場で石を持って待ってる人がいましたから怖かった。
「私は悪役なんかやりたくなかったのに、なんで石を投げられなきゃいけないの?」とつらかったですね。でも、辞めても行く場所がなかった。実家にもいまさら帰れない。
覚悟を決められたのは、私が入った極悪同盟の先輩のダンプ松本さんから髪の毛を半分剃られた時。私のためにやってくれたことです。「私の生きていく場所はリングの中だけだ」と覚悟したその17歳の時、自分がやっとプロレスラーになれたと思いました。
それからです、「石を投げたり、私を憎んでる人たちを全員私のファンにしてやる!」と誓い、体重を増やし続け、自分がリーダーで獄門党を結成して試合を頑張りました。
「私にもこれだけのファンがいるんだ!」
それから約7年後、合宿終わりの日に獄門党のファンの集いを開催できました。その時の写真です。写っていませんが、カメラの後ろにはファンがいっぱいいますよ。石を投げられた17歳の私から考えたら奇跡です。
「私にもこれだけのファンがいるんだ!」とうれしかった瞬間の秘蔵スナップ。それに、懐かしい写真についての取材をいただいても、昔のレスラー時代の写真は会社の持ち物で使えないので、おなじみのファンが撮ってくれたこの一枚は貴重です。ありがたい一枚! その日に初めて私を間近に見にきた人たちは、私のあまりの大きさにビックリして、遠巻きに見てましたね(笑い)。
■3カ月で50キロ減
その後、引退して50キロのダイエットをしました。現役の頃は115キロでしたから、65キロまで3カ月間で落として。食べ放題、飲み放題の生活から1日1800キロカロリーの生活に。トレーナーの先生も「病気じゃないか」と疑うほどみるみる痩せました。ダイエット中は立ちくらみはしてましたけど、痩せると健康で! うれしかったのは服が気軽に買えたこと。レスラー時代は21号のサイズで、どこも売ってないから、お相撲さん用の店や海外で買って数万円かかりました。9号になる過程で普通に女性ものを、しかも1000円で買えたりしてうれしかったですね。
今は体重をキープし、プロレスの解説など頑張っています。自分のYouTubeでは現役中の先輩や仲間のレスラーをゲストに当時のお話を聞いています。
(先月亡くなられた)風間ルミさんがゲストの時、「何か新しいことを始める」とおっしゃっていてまだまだ頑張ろうという思いが伝わり、無念だったと思います。残された私たちは頑張らないといけません。
(聞き手=松野大介)
▽本名=青木恵子 1968年1月、埼玉県出身。全日本女子プロレスでブル中野のリングネームで人気に。97年に引退。現在は中野区観光大使を務める。また「ベストボディ・ジャパンプロレスリング」やサムライTVで女子プロレス団体「STARDOM」を解説。YouTube「ぶるちゃんねる」配信中。