著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

五木ひろしの光と影<7>全日本歌謡選手権はうるさ型の審査員が切って捨てるのが売りだった

公開日: 更新日:

 視聴者参加番組の歴史は古い。現在も続く「NHKのど自慢」が始まったのは戦後すぐの1946年(当時の番組タイトルは「素人のど自慢」)。9歳児だった美空ひばりが「子供らしくない」という理由で鐘が1つしか鳴らなかったのは有名な話だが、1948年出場の若原一郎、1953年出場の坂上二郎に至っては見事優勝し、芸能界入りのきっかけを掴んでいる。その後も視聴者参加番組は途絶えることはなく、トーク番組やバラエティー番組、クイズ番組に至っては、70年代から80年代にかけて大半が視聴者参加によるものだったと筆者は記憶する。

 中堅作曲家だった平尾昌晃に審査員としてオファーが来た「全日本歌謡選手権」も「10週勝ち抜けば歌手デビュー」をうたった典型的な視聴者参加番組だった。ただし通常のそれと異なるのは、プロ歌手にも門戸を開いていた点である。プロ歌手が10週勝ち抜いた場合も再デビューの権利が与えられることになるが、もし敗れたら「素人に負けた」という汚名は拭えず、おそらく二度と芸能界の敷居をまたぐことは許されなかったはずだ。

 逆に“勝ち逃げ”をするプロも大勢いた。番組に出演することで顔を売ろうとしたのである。その最たる例が「かぐや姫」である。1973年に「神田川」がミリオンヒットとなり、フォークブームの代表的存在となる彼らだが、「南高節とかぐや姫」時代の1970年に出場し、審査員の淡谷のり子に音程を外したことを厳しくとがめられるなど悪戦苦闘しながらも4週勝ち抜き。5週目は出場を辞退している。南こうせつ自身「少しでも顔を売るために出た」と後年になって述懐している。「全日本歌謡選手権」とは、とどのつまり、「リアリティーショー」のはしりと言うべき番組だったかもしれない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  3. 3

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  4. 4

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  5. 5

    中居正広の騒動拡大で木村拓哉ファンから聞こえるホンネ…「キムタクと他の4人、大きな差が付いたねぇ」などの声相次ぐ

  1. 6

    木村拓哉は《SMAPで一番まとも》中居正広の大炎上と年末年始特番での好印象で評価逆転

  2. 7

    中居正広9000万円女性トラブル“上納疑惑”否定できず…視聴者を置き去りにするフジテレビの大罪

  3. 8

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭

  4. 9

    中居正広が払った“法外示談金”9000万円の内訳は?…民放聞き取り調査で降板、打ち切りが濃厚に

  5. 10

    中居謝罪も“アテンド疑惑”フジテレビに苦情殺到…「会見すべき」視聴者の声に同社の回答は?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭