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吉田隆記者、ジャーナリスト

1984年に写真週刊誌「FRIDAY」の創刊準備メンバーとして専属記者契約を結ぶ。87年の大韓航空機爆破事件では、犯人の金賢姫たちが隠れていたブダペストのアジトを特定、世界的に話題となる。初代「張り込み班チーフ」として、みのもんたや落合博満の不倫現場、市川染五郎(現・松本幸四郎)や石原慎太郎の隠し子、小渕恵三首相のドコモ株疑惑などジャンルを問わずスクープ記者として活躍。

<116>「全財産を田辺市にキフする」赤いサインペンで書かれた異常な「いごん」

公開日: 更新日:

 記事を読んだ早貴被告は息巻いていた。仮にもしドン・ファンの遺産が30億円だとすれば、妻の早貴は4分の3を受け取る権利があり、その額は約22.5億円で、残りの7.5億円がドン・ファンのきょうだいに渡ることになる。

 ところが、この「いごん」は田辺市に「キフする」という内容だったから、そうなると早貴被告の取り分は、遺留分請求で認められる半分の15億円になるわけだ。遺言を認めれば7.5億円も減ってしまうのであるから、鼻息が荒くなるのは当然と言えば当然のことであった。

 私は黙って様子をながめることにして、この件の記事を書くことはしなかった。なぜならニセの「いごん」を裁判所に提出させて文書偽造と同行使でMを告発したかったからである。

 後で調べると、どうやらニセの遺言書を提出しても文書偽造・同行使にはならず、それをいさめる法律はないと知って唖然としたものだ。

 この遺言書をめぐっては、2020年4月から和歌山地裁で遺言無効の裁判が始まっている。そして今年8月までに、ドン・ファンではない別人が書いたものだとする筆跡鑑定が3件、ドン・ファンの親族から提出されている。

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