著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

世田谷パブリックシアター「彼女を笑う人がいても」権力に屈した戦後ジャーナリズムの罪を問う

公開日: 更新日:

 冒頭、舞台後方のスクリーンに無数の黒い傘の群れが映し出される。それは1960年6月16日の国会議事堂前。劇中で「彼女」として語られる樺美智子さんを悼む葬列デモ。その映像に重なるように8人の登場人物が黒い傘をさして舞台上に現れる。陰鬱だがスタイリッシュな演出だ。

 2つの時代に共通するのはメディアの欺瞞性。敗戦後、政治権力からの自由を獲得したはずのメディアは親米保守党の復権と軌を一に社会の木鐸としての役割を放棄していく。それは今、政権への忖度・追従、報道の自己規制という形で「完成」した。その転回点となったのが1960年6月17日に出された七社共同宣言ではないかと作者は問う。

「理由のいかんを問わず暴力行動は許さない」と安保反対のデモ隊を牽制した新聞社の宣言によって日本の命運を左右する安保闘争の高揚はしぼんでいった。それは、福島の原発事故が収束していないことを知りながら五輪狂奔をあおり、真実から目をそらそうとしたメディアの罪とそっくり同じ。

 瀬戸が膨大なセリフをものともせず誠実な演技で舞台を牽引し、同じく二役の木下晴香のみずみずしい演技も光る。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  3. 3

    佐々木朗希「通訳なし」で気になる英語力…《山本由伸より話せる説》浮上のまさか

  4. 4

    金田ロッテはキャンプ中に「生理(性処理)休暇」を堂々と導入!監督就任翌年に日本一を達成した

  5. 5

    故みのもんたさん 闘病生活の中で本紙に語っていた「老い」と「人生最期の願い」

  1. 6

    大阪・関西万博もう間に合わず? 工事未完を「逆転の発想」で楽しむ方法…識者が皮肉たっぷり提唱

  2. 7

    ドジャース佐々木朗希まさかの「先発白紙」はむしろプラス…《メジャーレベルではない》の声も

  3. 8

    山田涼介のソロ活動活発化で“亀梨和也のトラウマ”再燃…Hey! Say! JUMPファン戦々恐々

  4. 9

    巨人・田中将大 戻らぬ球威に焦りと不安…他球団スコアラー、評論家は厳しい指摘

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇