<129>「いごん」は存在しなかったはずの社封筒でMに郵送された
「これですかね」
野崎幸助さんの遺言が入っていたという封筒を印刷した会社で、応対してくれた社長と一緒に応接室で待っていると、従業員の方がビニール袋に入った金色のアプリコの社封筒を手にしてやってきた。
「はい。それですね」
「ああ、これだ、これだ。ど派手なヤツだったねえ」
社長もビニール袋に数十枚入っている封筒を見てほほ笑んだが、私の目が留まったのは、そのビニール袋に黒いマジックで記されていた「平成25年12月3日」という日付であった。
「これは?」
「製品が出来上がった日付です。それ以前のものはコレですね」
後から従業員が持ってきたビニール袋には、白いアプリコの社封筒が入っていた。
「ということは、この金色の社封筒は平成25(2013)年の12月に初めてアプリコに納入されたということですか?」
「そうなりますね。少しお待ちください。伝票を確認しましょう」