<165>野崎さんが所有していた60坪の更地は田辺市と4000万円で取引した
野崎幸助さんは田辺市東山のスーパーやホテル、レストランが入居している複合商業施設「オーシティ」前の駐車場となっている一画に、60坪の更地を所有していた。「オーシティ」は和歌山に本社を置く東証1部上場のオークワというスーパーが所有していた。和歌山県人なら誰もが知っているおなじみのスーパーである。
周りの土地はオーシティの駐車場にするために、スーパーオークワが所有したり賃貸契約をしたりしていたが、ドン・ファンは頑として駐車場の契約を結ばず、自分の土地の周りに看板などを置いて土地を売らない、貸さないことを明示していた。つまりスーパーの駐車場の真ん中にぽっかりとドン・ファン所有の土地があったということで、オークワ側からすれば邪魔なので、なんとか賃貸契約か取得したいと思っていたようだが、ドン・ファンにはねつけられていたのだ。
これは「この土地に将来、市役所が移転してくるのではないか」「そうなれば高く売ることができる」とドン・ファンが思っていたことと関係してくる。
田辺湾の海岸沿いに立つ現在の田辺市庁舎は老朽化が目立つうえに、津波が来れば間違いなく被害を受ける場所にある。市は高台の移転候補地を選定し、3カ所の候補地のひとつがオーシティのある田辺市東山の高台だった。JR紀伊田辺駅から徒歩10分ほどの距離で市の中心部に属しているが、土地面積が十分というわけではなく、駐車場のキャパが少ないし、そこへのアクセス道路が狭いのが難点である。