<170>「ドン・ファンを殺したのは早貴」公衆電話から突然かかってきた謎の電話
「ええ、今は須藤早貴ですけど……」
この瞬間、体に電流が走ったように感じ、意識がシャキッとした。その年の初めに早貴被告が野崎姓から旧姓の須藤に名字を変えたことはマスコミに知られておらず、報道もされていなかったが、電話の向こうの相手はそれを知っている。
「吉田さんがドン・ファン事件のことを一番詳しいことは知っています。そこで相談したいので電話をしました」
「何を?」
「私は早貴のことを知っています。ドン・ファンを殺害したのは早貴ですから」
「そんなのはオレも知っているよ。だけど証拠がないから逮捕されていないじゃないか」
私は軽く笑った。
「いや、逮捕は近いと思うんです」
「何を根拠に? あなたはそれを教えてくれるのかい?」
「いや、そのことはオイオイ吉田さんに話していくことになりますが、私が今お願いしたいことをかなえて下されば考えます。吉田さんにとっても最高のネタになると思っていますから」