大越健介氏はやはり野に置け! ウクライナ報道で信用できるキャスターは誰?
テレビの前の視聴者も、報じている番組スタッフも気付いていないかもしれないのだが、ロシアによるウクライナ侵略の連日のニュースやライブ映像は、日本のテレビ局としてはおそらく初めての“攻撃を受けている側”からの戦争ライブ報道だ。
ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争では、日本のメディアに限らないが、西側のテレビはアメリカ軍の後ろにいて報じてきた。戦火の犠牲となった住人や破壊された街や村の悲惨さを訴えてはいても、それは攻撃が終わった後の様子でしかなかった。
「日本のメディアにとって、ミサイルや銃弾は向こうへ飛んでいくもので、向こうから飛んでくるものではなかったんです。湾岸、イラク戦争でもテレビで流れたのは、アメリカ軍の艦艇から発射されかなたに飛び去るミサイルの炎と煙でした。しかし、ウクライナでは、マンションや病院が爆撃され、市民が吹き飛び、母子が逃げ惑う側にテレビカメラはいます。戦争を伝える立ち位置がまったく反対側になったんです。ここまではっきりと蹂躙され殺される側に立った報道は、日本のテレビでは初めてでしょう」(放送アナリスト)
もちろん、アメリカとロシアという大きな違いはあるが、「攻撃側からの報道ばかりでいいのか」と疑問を抱いてきたテレビジャーナリストの中には、いまこそ戦争の理不尽を伝えなければと、言い方は悪いが、張り切っている人はいる。テレビ朝日系「報道ステーション」の大越健介キャスターも、そんなひとりなのだろう。NHK時代に「シリーズ 激動の世界」でプーチンの特集を担当したこともあり、さっそくポーランドとウクライナの国境地帯に出かけ、特番「タモリステーション」でこう生リポートした。
「避難民の人たちの姿を見ると、戦争はたしかにウクライナを戦場として起きているのだということを実感します。私はいま、まさに恐ろしい戦争の現実の一端に触れているんだという思いを強くします」
こういうときの大越は頼りになる。スタジオでキャスター然としているより、「やはり野に置け」である。
冷静に情報を読み解くことが求められる
「戦争報道は、一方的なプロパガンダやフェイク情報・映像に引っ張られ、ムードに流されるのが一番危ない。ワイドショーで『演説するゼレンスキー大統領がすてきだった』『ウクライナはかわいそう』と、ミーハーな感想を並べるタレントコメンテーターが最悪です。こんな時こそ、情報の真偽を見極め、冷静に情勢を読み解くことがテレビには求められます」(前出の放送アナリスト)
「報道特集」(TBS系)の金平茂紀キャスター、「報道1930」(BS-TBS)の松原耕二キャスターらも、争乱取材の場数を踏んでいるだけあって、目下のウクライナ情勢を過不足なく伝えて信頼できそう。報道・情報番組、キャスター、コメンテーターの真価が問われている。
(コラムニスト・海原かみな)