鮎川誠さんの「ロック葬」で見た光景…一人の女性と一つのギターを愛し続けたロック人生
歌がすっごくうまいってわけじゃないけど…
そのカッコよさを僕も見たことがある。1981(昭和56)年3月5日、渋谷のライブハウス「屋根裏」で。大学受験で上京し、真っ先に情報誌「ぴあ」を買って(時代を感じる)受験当日このライブがあるのを見つけた。「生まれて初めてライブハウスに行くぞ」という興奮の中で入試を終え駆けつけると、狭い会場はすでにぎっしり。汗が飛んできそうな近さでシーナがシャウトし、鮎川誠がギターを爆音でかき鳴らす。
「こんなイカしたライブが見られるなんて、僕も東京に住むぞ!」と誓った。もちろん大学は落ちたので、親に泣きついて東京で浪人させてもらった。
あれから42年、「ユー・メイ・ドリーム」を歌うシーナの声が今も耳に響く。
「ちょっとだけ ふれる感じの 口づけを か・わ・す」ってのがよかった。その時のしびれた感じを、栗田さんにこう伝えた。
「シーナさんは、歌がすっごくうまい、ってわけじゃないですけど、そこがイイですよね」
笑顔で深くうなずく栗田さん。
「わかります。それがシーナの魅力ですよ」
「やっぱりロックはテクよりソウルですね」
栗田さんはまたもグッと指をあげて「その通り!」。
曲のサビの部分でシーナが「これが私のすてきな ゆめ~」と繰り返す。そこに鮎川誠のギターが絡みついていく。とんがって勢いのあるサウンド。彼は親交のあった福岡のロックミュージシャン、山口洋さんにこう語ったという。
「うまい下手だけでギタリストの好き嫌いを決めるような人は、そもそもロックなんて聴かん方がいい」