北島三郎「引き際」の美学 競走馬ビジネスは好調、事務所お開き、“唯一”の心残りは?
「寂しいけど芸道60周年を機に幕を下ろしてみようと思った。引き際は大事」
■冠番組「サブちゃんと歌仲間」がついに最終回
演歌界の御大、北島三郎(86)は冠番組「サブちゃんと歌仲間」(BSテレ東)の最終収録でそう言って、笑って見せた。初回放送から27年、紹介した新人歌手は6000組にのぼり、来月の最終回で1377回もの放送回数を数える。
昨年春に卒業した座長公演は実に48年、新宿コマ劇や大阪の新歌舞伎座などでファンを沸かせてきた。出場50回の紅白歌合戦では平成以降、白組のトリで「まつり」を熱唱、盛大に盛り上げた。昨年の大みそかには「年忘れにっぽんの歌」(テレビ東京系)で「まつり」を披露したが、車いすのままだった。
「八王子市のご自宅で転倒し、左足の指5本と右足の指2本を骨折、全治2カ月の重傷を負った2019年の秋あたりから、歩くことが難しくなり、車いすから離れられなくなっているのです。また加齢によって、脊髄が圧迫され、手足に痛みやしびれの走る頚椎症性脊髄症もあり、2016年に手術したものの、完治していないのかもしれません」
そう元レコード会社プロデューサーは言い、こう続けた。
「北島ファミリーとして名を馳せ、山本譲二ら多くの弟子を輩出した北島音楽事務所もエンディングのようです。北島さんの娘婿である北山たけしら最後の弟子として、所属の4人が3月いっぱいで事務所から退所していく。同事務所には、『ダンシング・オールナイト』のもんたよしのりに大橋純子ら、演歌以外のアーティストが所属していたこともあるんですよ。一つの時代をつくったと言えるのでは」
■作曲家・船村徹さんへの恩返し
北島音楽事務所は新栄プロから独立した御大が1972年に設立。後進の育成やマネジメントにも積極的に取り組んだ。構成作家のチャッピー加藤氏が言う。
「北島さんは昔から『これは』という才能には目をかけ、世に出る手伝いをしていました。自分も流しからの叩き上げで、作曲家の船村徹さんに才能を見いだしてもらったことへの恩返しなのです」