大橋純子さん「生歌」にこだわり続け…圧倒的声量で歌詞の世界を立体化させた希有なシンガー
音楽番組全盛の昭和には、こうした歌唱力のある歌手が多数いた。生バンドを従えたステージで、大勢の観客を前に歌わなければならないという環境もあったろうが、それでもあの時代、日本人離れとされた才能がきらめいたのはどうしてなのだろうか。
「大橋さんの場合、どんなジャンルの曲でも表現力豊かに歌いこなす才能があった。それと、やはり声量ですね。説得力、歌詞の世界観を立体的に表現できるかどうかって、突き詰めていくと声量なんです。声にボリュームがあって、しかも息が長く続くこと。声量があると、歌にメリハリが付くんです。強弱の使い分けですね。盛り上げる部分では大きく、語りかけるような部分では小さく。
ささやくように歌っても、声量があるとちゃんと聞こえる。これはジャンルを問わず『この人、うまいなあ』と思うアーティストに共通することで、人間が歌ってる、ということが伝わる。昭和の歌謡曲は、歌詞の中にそんなに情報量がなくて、そのすき間を聴く側の想像力で補完するわけです。だからこそ聴き手に、くっきりと画を浮かばせる歌手が求められた。大橋さんやもんたよしのりさんはそういう歌手でした。小手先のテクニックに走るんならAIでもできますけど、これはできない。そういうことじゃないでしょうか」(加藤氏)