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山田勝仁演劇ジャーナリスト

「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」不朽の名作を通して訴えた非戦の願い

公開日: 更新日:

コクーン・プロダクション2023「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」

「ガラスの動物園」はアメリカの劇作家、テネシー・ウィリアムズの出世作であり、自伝的色彩の強い作品だ。

 物語は1930年代のセントルイスのウィングフィールド家が舞台。父は家出して不在。長男トム(尾上松也)は詩人で、いつかこの町を出て栄誉をつかみたいと思っているが今は倉庫番に過ぎない。

 母・アマンダ(渡辺えり)はプライドが高く、他者を自分の尺度に当てはめ、理想を押し付ける毒親。姉のローラ吉岡里帆)は足が不自由なため、内向的で自分の殻に閉じこもったまま。そんな一家の夕食に呼ばれたのがトムの同僚のジム(和田琢磨)。彼は高校時代にローラが淡い恋心を抱いていた相手だった。偶然の邂逅(かいこう)にローラの心は弾むのだが……。

 追憶の物語として、今も世界中で上演されているが、今回、上演台本と演出・出演の渡辺えりは、この名作に自らの体験を重ね合わせることで戯曲の深部に新たな光を当てた。

 作品の時代設定である1930年代の世界恐慌の時代と長引く不況で右傾化する日本、ウクライナ戦争、パレスチナ・ガザへのイスラエル攻撃、そして彼女がこの作品を文学座公演で見た1971年──3つの時代を通底させたのだ。

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