「あぶ刑事」で鈴江刑事役の御木裕さんは今…小細胞がんで2年半闘病も「節制はしていません」
石原プロの新人時代に渡哲也さんから「歯を食いしばれ」
驚異の生命力だ。体力も少しずつ回復。それでも、俳優業は控えているという。
「途中で何かあって、再撮影とかになったらみんなに迷惑かけますから。病気をするまでは、筋肉ムキムキでVシネマにヤクザ役で出てたんですよ。今はクイズ番組に出たり、ここで30~40分のワンマンライブをやったり。歌手でもないのに、歌っています」
6年前から月に1回、エルビス・プレスリーやトム・ジョーンズの歌を、30人超の客を前に披露し喜ばれているそうだ。
御木さんは36歳のとき、一時俳優を引退し、実業家に転身していたのではなかった?
「本当はこっちの作品に出たいのに、あっちに出ろ、と言われたり、やりたいことができないことがあったんです。もともと俳優志望だったわけじゃないから、『自由にできないんなら、もういいや』って。で、浄水器を売ったり、オリジナルドリンクを作って売ったりしていました。俳優をやってるいとこから、『ちょっとだけでも出てくれませんか』と頼まれたのを機に、またあちこち出るようになりました。やっぱり現場は楽しいですから」
商売は闘病を機にすっぱりやめた。今は35年前に出会って弟子入りした、大仏師・宇都宮秀雲氏の仏像制作の手伝いをしているという。
「それから、犬をかわいがってます。オスのトイプードルの保護犬で、今は3匹目。2番目の子はボクの闘病中、ボクの代わりに体中がデバネズミみたいにハゲて、コロッと逝っちゃった。身代わりになってくれたんだなと思ってね。犬にはホント、癒やされて、救われました。今の一番の楽しみは、犬をかわいがることですよ」
さて、宗教団体「PL教団」創始者の一族として、大阪府富田林市に生まれた御木さんは、近畿大学在学中、作家・石原慎太郎にスカウトされ、慎太郎の弟・石原裕次郎の事務所「石原プロモーション」入り。80年、人気刑事ドラマ「西部警察」のジョー刑事役でデビュー。空手仕込みの華麗なアクションを披露し、高い人気を獲得した。
「新人時代、酒の飲み過ぎで大遅刻して、石原裕次郎さんや渡哲也さんを待たせたことがあってね。裕次郎さんは何も言わなかったけど、渡さんにはちょうど怒られるシーンを撮るところだったから、『歯を食いしばれ』と言われ、マジで殴られました(笑)。渡さんは真面目で、気遣いの人。マスコミの前とかでは澄ましてましたけど、ボクの前ではプレスリーに合わせて体を揺らしたり、陽気な姿を見せてましたよ」
都内のマンションに、夫婦2人暮らしだ。
(取材・文=中野裕子)