「子供相手にやっているうち、大人の客に受けなくなってしまった」
2003年、二つ目に昇進した晴の輔(当時は志の吉)だが、新たな仕事場は、前座時代とだいぶ様子が違った。
「それまでは志の輔独演会の前座として出てましたから、常に300人以上の大きなホールの会場ばかりでした。お客さまも、志の輔の弟子だから聴いてやろうと温かい。それがいきなり健康ランドの宴会場みたいな、落語を聴く気がないお客が多い仕事に戸惑いました。もちろんギャラは安いので、副業として、結婚式の司会と余興も数をこなしましたね。小学生に落語を聴いてもらう『子供らくご』を始めたのもその頃です。ところが、子供相手にやってるうち、大人の客に受けなくなってしまった。子供向けの声音と口調が、くせになってたからです」
そこで志の吉は、都心、東京都町田市、横浜市、埼玉県川越市、千葉市の5カ所で、隔月開催の勉強会を始めた。
「それぞれの地元に世話役の方々がいて、セッティングしてくださいました。その会は現在も続けています」
勉強会を重ねることでネタが増え、実力が備わってきた。そして2012年、真打ち昇進を目指す。