日枝久取締役相談役が辞めてもフジテレビの再生なし…「独裁者」がいるメディアほど業績がいい不思議
「フジの“上納文化”をつくったのは日枝久だ」「“独裁者”日枝が40年近くも支配してきたためフジは企業統治不全に陥っている」「日枝久の大罪を暴く」──。
諸悪の根源は日枝相談役にあり、彼を取り除きさえすればフジテレビはまっとうなテレビ局になるがごとき言説がまかり通っているが、本当だろうか。
私は長年メディア界を見てきたが、独裁者と呼ばれた人間は多くいる。テレビ朝日初のプロパー社長になった早河洋代表取締役会長もその一人だろう。今は業績、視聴率ともに好調だから“平穏”に見えるが、醜聞の火種はくすぶっているとみているのだが。
しかし、読売新聞の歴代の独裁者たちに比べればまだ可愛いといってもいい。読売中興の祖といわれる正力松太郎の新聞の“私物化”は今でも語り草である。中でも自分の動向を記者に書かせ、逐一紙面で報じる「正力物」は読者からも批判が寄せられた。当時読売に在籍していた作家の本田靖春によると、あまりの正力の私物化に抵抗して、正力が住んでいる逗子に配る新聞だけで大きく扱い、そのほかの地域はベタ記事に差し替えるという“姑息”なこともやったという。だが、社内からの批判の声は大きくならず、本田だけが抗議の意味を込めて読売を辞めた。