日枝久取締役相談役が辞めてもフジテレビの再生なし…「独裁者」がいるメディアほど業績がいい不思議
私は、広岡の晩年、親しくさせてもらった。1989年、沖縄のダイビング組合からのクレームで朝日のサンゴ記事が捏造だったことが発覚し、社長が引責辞任に追い込まれた時、広岡は私にこういった。
「昔は朝日とケンカしたって勝てないから、政治家だって文句をいってくるヤツはいなかった」
メディア界に独裁者が生まれやすいのは、即断即決することが多いためトップダウンのほうが物事を進めやすいことがあるのかもしれない。それに独裁者のいるメディアは不思議に元気があり業績がいいのである。
日枝も女子アナのアイドル化を進め、長年フジを視聴率トップの座に君臨させてきた功績はある。だが、「権力は必ず腐敗する」の例え通り、40年近くもの間フジテレビを私物化し、有能な後継者を育ててこなかったツケがここへきて一気に噴き出てきた。辞任は当然だとしても、それだけでフジの健全化や視聴者からの信頼回復ができるとは、私には思えない。(文中一部敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)