2月歌舞伎座 中村屋の芸、「18代目勘三郎」のDNAここにあり
昨年に続き、2月の歌舞伎座は「中村勘三郎」にちなむ猿若祭。勘三郎家に縁のある役者たちが、縁のある演目を演じる。
昼の部では、蔦屋重三郎を主人公にした『きらら浮世伝』が話題。NHK大河ドラマ『べらぼう』に便乗しているが、ゼロから作ったのではなく、1988年に銀座セゾン劇場で、横内謙介の脚本で作られ、中村勘三郎(当時・勘九郎)が主演して上演されたもののリメーク。だが37年ぶりだし、歌舞伎としては今回が初めてなので、新作と言っていい。
勘九郎の蔦屋重三郎は若さがあふれ、七之助の遊女は情があり、はじめからこの兄弟に当てて書かれたかのよう。バブルただ中の1988年に銀座セゾン劇場というバブルの象徴みたいな劇場のために作られただけあって、前半はイケイケドンドン。これがいまの閉塞した時代にはマッチせず、役者の熱量についていけないところもあった。後半は幕府による弾圧が描かれ、重くなる。それをはねのけるエネルギーが1988年にはあったのだろうが、いまはないので、重く沈んでしまう。
いい作品だが、バブル時代の産物で、いまの時代には合わないと感じた。俳優たちには何の罪もないが、新作の演劇は、優れた作品であればあるほど、作られた時代の雰囲気から逃れられないと実感した。