【追悼】いしだあゆみさんは「よろめかせたい女優」だった
いしだあゆみが亡くなった。享年76。昨年公開された柳葉敏郎の主演映画「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」への出演が最後になった。
そういえば、先月放送された「懐かしのNHK紅白歌合戦~第20回」(リマスター版)で1969年に初出場のいしだあゆみが「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌っていた。その姿は大人びていてとても21歳とは思えない。あの頃の日本人は年相応というか、ちゃんと成熟していたのだなあと感心していたところだった。
半世紀以上も前の歌が、今も京急電鉄「横浜」駅の発車メロディーに使われるなどご当地ソングとして愛され続けている。歌の魅力、いしだのあの鼻にかかったような独特の歌声あってこそだ。
俳優としても映画「日本沈没」の令嬢や「青春の門─自立篇」の娼婦カオル、作家・檀一雄をモデルとした「火宅の人」の妻・ヨリ子など意志の強い、凛とした女性がぴったりとハマっていた。マドンナを演じた「男はつらいよ」(29作)の寅さんに迫る寂しげなかがりさんもよかった。