妊孕性温存療法 女性は患者によって3つの凍結方法がある
一般的には卵子凍結は未婚女性、受精卵凍結は既婚女性に実施される。妊娠率の報告では、受精卵凍結が約40%に対して卵子凍結は10%前後。これは卵子の場合、凍結のダメージが影響しているといわれている。ただし、この2つの凍結保存は排卵を待たなければいけないという欠点がある。
「一方、卵巣組織凍結は2、3日ででき、月経発来前(思春期前)やがん治療までに時間的猶予がない場合に有効です。やり方は、腹腔鏡手術で片側の卵巣を摘出し、その組織片を凍結保存します。そして、がん治療後に溶かして、もう片側の卵巣に移植する。すると卵巣の機能が回復して排卵が起こるようになり、自然妊娠や人工授精ができるようになります」
ただし、進行がんや白血病、卵巣がんの場合は、摘出した卵巣に転移している可能性があるので勧められない。最近の報告では、卵巣組織凍結による卵巣機能の回復は65%前後、妊娠出産率は25%前後とされているという。
男性の妊孕性温存療法としては「精子凍結」が行われている。女性と違ってマスターベーションで精液を短時間で採取できるので、がん治療を遅らせずに実施することができる。しかし、精子形成が未熟な思春期前の若い男児では精子保存が困難なため、「精子組織凍結」の研究が進められている。
国内でこれらの妊孕性温存療法を実施できる施設は限られ、日本産婦人科学会のホームページから検索できる。