頭部打撲が多いとなぜ認知症発症リスクが高いと言われるか
つまり、頭部にダメージを受けて脳表面を覆う硬膜内リンパ管が壊れたりつぶれたりすると脳内のゴミが行き場を失うことになる。脳卒中を起こして脳内の血管の一部が壊死したときも同様で、行き場を失った脳内のゴミはどんどんたまり、脳神経細胞を殺していく。そんな構図が見えてくるのだ。
その意味では頭部にくり返しパンチを受けるボクサーに「ボクサー脳症」と呼ばれる認知症やパーキンソン病に似た症状が出たり、それを放っておくと認知症、パーキンソン病を発症することも納得がいく。
米国サッカー協会が2015年から10歳以下の子どものヘディングを禁止し、11~13歳以下の子どもの練習中のヘディング回数を制限している。これは賢明な判断かもしれない。
「忘れてならないのは、睡眠もまた脳内の異常なタンパク質の排出に関わっていることです。実際、アルツハイマー型認知症の原因とされるAβは脳間質液中の濃度が睡眠のサイクルに合わせて日内変動していることが報告されています」
アルツハイマー病を発症した実験用マウスの睡眠を数時間阻害しただけで脳間質のAβが増加することや長期睡眠を阻害するとアルツハイマー病の特徴とされる老人斑(Aβの塊)が促進されることが報告されている。