日本語学者・山口仲美さん がん手術で抱えた“選択の悩み”
■意思決定できたのは予定日の2日前
「膵臓がん」が分かったのは、それから4年後です。大腸がんの4年目検診に行ったら、「CA19―9」という腫瘍マーカーが基準値の3倍になっていた。膵臓がんの時に上昇する数値です。大腸がんの時の主治医は、すぐにCT検査と超音波検査をしてくださった。でも、異常なし。この先生は粘り強い方だったんですね。今度はPET検査をしてくださった。そしたら、膵臓にブドウ糖が集積。それからMRIを撮ったら、膵臓に15ミリ大の腫瘍があると出た。ただちに、膵臓がんの担当医に回され、手術の日程が決められた。
ここで、2番目の選択の悩みが訪れます。手術をすべきか、それともこのまま自然に任せるかという選択です。当時、「膵臓がんは、手術しても効果がないので、そのままにしておく」という風潮があった。
膵臓がんの5年生存率はきわめて低く、わずか数%。手術しても無駄かもしれない。だったら、手術は受けないことにしようか。
でも、このまま座して死を待つというのは、自分の生き方ではない。ダメでもともとなら、手術を受けよう。そういう気持ちも襲ってくる。手術を受けると意思決定できたのは、何と手術予定日の2日前だった。その決意を促したのは、次の2つの理由でした。