インフルエンザで脳梗塞、心筋梗塞、認知症に…なぜ起こる?
急性心筋梗塞にも注意が必要です。昨年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」は、インフルエンザと診断されて1週間以内で心筋梗塞になるリスクが6倍に跳ね上がるとの論文を掲載しました。興味深いのはインフルエンザの型によってそのリスクが変わることです。A型では5倍でしたが、B型では10倍と報告されました。
インフルエンザ感染では、呼吸器以外に血管にも免疫が関係する炎症が起こることが考えられます。そのため、血管の内皮が傷つき動脈硬化層(プラーク)の破裂が起こることがあり、そこに血栓ができるのです。高熱と脱水による血圧低下や血液が固まりやすくなることも、血栓ができるのを助長します。また、感染のストレスによって冠血管がけいれんし、血管内腔が詰まったりすることも原因ではないかと考えられています。インフルエンザで心筋の炎症が生じ、心機能が落ちて不整脈が出ることもあります。
インフルエンザは毎年流行するため、ありふれた軽い病気のように感じている人もいるかもしれません。しかし、侮ってはいけません。インフルエンザは毎年1万人以上が亡くなる恐ろしい病気です。できるだけ予防ワクチンを接種し、感染しても重症化しないようにして、異常を感じたら早めに病院で診断を受け、安静休養をすることです。
(東邦大学名誉教授・東丸貴信)