岸あさこさん 世界でもまれな乳がんで「終わった」と思った
さらに、その料理教室には乳がんの手術によって包丁が握りにくくなったりした人のための「乳がん患者専門クラス」があり、乳がんのつらさや悩みを分かち合える仲間と出会えたのです。それが今の仕事につながりました。
初めはSNSで乳がん患者の会員制の交流サイトを立ち上げ、情報を共有し合う場をつくりました。そのうちに乳がんの手術前に鏡などを使って胸を自撮りしている人が多いとわかったのです。「プロのカメラマンに美しく撮ってもらいたい」という声を聞いて、「それなら」と東京に小さなスタジオを設けました。資金はクラウドファンディングで集め、2019年10月にスタートしました。
誰もが初めは緊張しています。手術を控えて失ってしまう胸を写真に残そうと考えていらっしゃるので、来るなり号泣される方もいます。でも、乳がんを経験した者にしかわからないいろいろな話で盛り上がり、いつしか笑顔になっていくのです。そして「私も岸さんみたいになれるんですね」とスッキリして、写真とともにお帰りになります。
私にとって料理教室の先生がそうであったように、今度は私が誰かの良きお手本になれたらうれしいと思っています。