iPS細胞を使った「心筋球」による心筋再生医療の期待と課題
大阪大は明確に否定していますが、心臓の表面に心筋細胞シートを貼る方法の場合、脂肪の層などにじゃまされて、心筋細胞が心臓そのものに到達しにくいのではないかという意見があります。一方の慶応大では、心筋には厚みがあるため、表面だけをシートで覆うよりも、心筋球を直接打ち込むことで心筋細胞の広がりや残存率が高まるのではないか。球状に加工することで内側の心筋細胞の質が保たれやすくなり、心筋への分化率がより高くなるのではないかといった期待をかけています。
また、心筋球を注入することで血管新生によって新たにできる血管が心筋の虚血を改善して症状を緩和する効果もあるのではないかと考えています。心筋シートを使う方法では、再生される新たな細胞から「サイトカイン」と呼ばれる生理活性物質が放出され、それが血管を新生したり筋肉の状態を改善する効果があります。心筋球を打ち込む方法の方が、より効果的に新生血管がつくられ、心筋の血流をよくする可能性があると考えられます。動く筋肉が再生された場合、スムーズな血行がなければ維持できません。筋肉が定着するということは、血行を維持するための新たな血管がつくられるということなのです。