ハートシートは心臓移植を待つ患者さんに大きなプラス
「ハートシート」を使った心筋の“再生医療”が一般的にも広く普及しそうな環境が整ってきました。「拡張型心筋症」や「虚血性心筋症」といった心筋が衰弱して心臓のポンプ機能が働かなくなる疾患を対象にした治療法です。
ハートシートとは、患者さんの大腿部の筋肉から取り出した骨格筋芽細胞を培養し、シート状にしたものです。そのシートを衰弱した心臓の表面に貼り付けると、シートから肝細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子などのサイトカインが分泌され、心臓の表面で血管新生が起こります。これが血液供給の増加につながり、カチカチになっていた心筋が柔らかくなって心臓の動きが改善されるのです。
また、高分化細胞である骨格筋芽細胞を使ったハートシートは、未分化細胞のiPS細胞を使う再生医療とは違い、細胞ががん化しにくいというメリットもあります。画期的な治療法といえるでしょう。虚血性心筋症は、糖尿病などで動脈硬化が進み、冠動脈が狭くなって心筋に血液が送られなくなることで起こります。しかし、たとえばバイパス手術を行って血流を再開させても心筋症だけが進行し、重症心不全を招いて死に至る症例が存在することもわかってきました。拡張型心筋症もそうですが、最終的な治療法は心臓移植しかありません。ただ、現在の日本では心臓移植のハードルが非常に高く、実施される例も極めて少ない状況です。