末期がん患者がたどる経過について周囲が知っておくべきこと
とはいえ、がん患者の多くは治療の有無にかかわらず、がんは進行する。
「リンパ節への転移、他の臓器への転移、そして腹膜や胸膜へ広がるだけでなく、皮膚の表面にまでがんが浸潤する場合もあります。骨に転移し、その周りにある神経に浸潤することで腰や足のしびれや痛みが強く出ることも少なくありません。肺でのがんの広がりは呼吸苦につながります」
これらは進行したがんに見られる症状のほんの一部だが、どのがん種でも末期に多く見られるのは「黄疸」「腹水」「食欲低下」だという。
「肺がん、胃がん、乳がんなどほとんどのがんは肝臓へ転移しやすくなります。そのため末期がんの患者さんは、肝臓で処理できなくなったアンモニアが体に広がることで、黄疸が見られるようになります。眼球から始まり、全身が徐々に黄色くなってきます。その頃には、アンモニアが脳に到達することで、『肝性脳症』という症状が起こります。頭がぼーっとして、幻覚が出たり、精神的に不安定になり、そのうち全体として意識状態が悪くなっていきます」
肝転移は腹水を招く。もともとお腹の中には腸がスムーズに動くために少量の腹水が存在しているが、これが多くなる。肝臓の機能がストップしてアルブミンが作られなくなり、血管の外に出た水分を血管に戻して保持できなくなるからだ。