がんの治療は病院で、貧血の治療は在宅で…使い分けも可能
在宅医療を利用する患者さんはさまざまな事情を持っています。病状や年齢によってもいろいろなケースがあり、すべての治療を在宅医療が担当する場合もあれば、ある部分は病院、ある部分は在宅、と分担する場合もあります。
最近、私たちの診療所で在宅医療を開始することになった90歳の男性。胃がんで、リンパ節転移があり、ここにきて肝臓への転移の恐れが出てきたとのこと。これまでは通院でがんから来る痛みを薬でコントロールしていたのですが、今後を考えるとADL(日常生活動作)の低下が予想されたため、在宅医療に切り替えることにしたのです。
長男には主治医の先生から、余命が数年だろうと告知されていました。しかし、患者さん本人は90歳とは思えないほど、ましてやがんを患っているとは思えないほど、しゃっきりとされています。ご自身も、介護の必要性を全く感じていない。
長男によれば、手術を受け、その後、抗がん剤治療を受ける予定でいたのですが、90歳という年齢を考慮し、長男をはじめご家族と主治医が話し合った結果、積極的な治療はせず、緩和に重きを置いて、となったとのこと。ただ患者さん本人は、もうちょっと頑張れるのにと、戸惑い気味のようです。