著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「アレルギー」は心臓血管疾患の発症に大きく関わっている

公開日: 更新日:

 潜在的な「食物アレルギー」があると、心臓血管疾患による死亡リスクがアップする──。米国のバージニア大学保健システムの研究で明らかになりました。

 2005~06年の米国国民健康栄養調査と、アテローム性動脈硬化に関する多民族研究のデータを解析したところ、1種類以上の食品に対する感作(免疫機能が働いてIgE抗体がつくられアレルギー反応を起こす状態)がある場合、心臓血管疾患による死亡リスクが約1.7倍になっていたそうです。

 潜在的な食物アレルギーというのは、ある食品に対して急性のアレルギー症状は現れないもののIgE抗体レベルが上昇するケースとされています。それがなぜ心臓血管疾患による死亡リスクを上昇させるのかについてははっきりわかっていません。研究グループは「アレルギー反応に関わるマスト細胞と呼ばれる細胞は、血管や心臓にも存在する」と述べていて、「アレルギー反応を評価する血液検査が心臓の健康に良い食生活のアドバイスとなる可能性につながるのではないか」としています。

 そもそも、食べ物だけでなくあらゆるアレルギーは心臓血管疾患と大きく関係しています。アレルギーというのは、体内にウイルスや細菌などの異物が侵入してきたときに排除しようとする免疫反応が過剰になることで、体にとってマイナスになる症状を引き起こす状態です。そのアレルギー反応によって体のどこかで炎症が生じ、繰り返していると慢性炎症が起こります。すると、炎症性サイトカインなどの生理活性物質が放出され続け、全身の血管の内皮にダメージを与えて動脈硬化を促進したり、血栓ができやすくなったりします。つまり、アレルギーは心臓血管疾患のリスク因子といえるのです。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    国分太一が社長「TOKIO-BA」に和牛巨額詐欺事件の跡地疑惑…東京ドーム2個分で廃墟化危機

  3. 3

    浜田省吾が吉田拓郎のバックバンド時代にやらかしたシンバル転倒事件

  4. 4

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  5. 5

    「いま本当にすごい子役」2位 小林麻央×市川団十郎白猿の愛娘・堀越麗禾“本格女優”のポテンシャル

  1. 6

    幼稚舎ではなく中等部から慶応に入った芦田愛菜の賢すぎる選択…「マルモ」で多忙だった小学生時代

  2. 7

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  3. 8

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  4. 9

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  5. 10

    フジテレビ系「不思議体験ファイル」で7月5日大災難説“あおり過ぎ”で視聴者から苦情殺到