「腰痛」の背後に命に関わる心臓病が隠れているケースがある
年をとって「腰痛」がひどくなった……そんな高齢の方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。高齢になると骨や筋肉が衰えて体を支えきれなくなったり、加齢とともに関節の軟骨がすり減るなどして、腰の関節に痛みが生じるケースは少なくありません。そうした高齢者の腰痛は、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、圧迫骨折などを起こしているケースが多く、慢性的な痛みがある人がほとんどです。しかし、ある日突然、腰にこれまで経験したことがないような激痛が生じた場合、命に関わる心臓トラブルのひとつである「大動脈解離」を発症している危険があります。
大動脈解離とは、前触れなく血管が裂けて解離し、1度目の発症で突然死する危険がある病気です。とりわけ、心臓に近い上行大動脈が裂けた場合、発症から1時間あたり1~2%の致死率で症状が進み、発症して24時間以内の死亡率は90%を超えるというデータもあります。ですから、できる限り早く緊急手術を行うことが重要です。
大動脈解離の初期症状は激痛が走るケースが多く、患者さんはよく「体を引き裂かれたような痛み」と訴えます。最初に解離した血管の位置によって痛みが発生する場所は変わり、心臓に近い血管が裂けた場合は胸、胸部の大動脈なら背中、腹部の大動脈なら腰に激痛が現れます。ただ、血管の解離は裂けた位置から血流に沿って進行していくので、最初に心臓の近くの血管が裂けたとしても、胸↓背中↓腹部↓腰と痛みが移動し、解離の進行とともに腰痛が生じます。